東京都武蔵野市議会で13日、子どもの権利条例が可決・成立した。子どもの権利とは何か。それが尊重されるまちの姿とは――。条例案作りの過程では、「子ども」の当事者である10代が数多く参加し、考えた。条例の前文には、その成果として「子どもたちのことば」が盛り込まれている。
条例の前文に盛り込まれた「子どもたちのことば」は589字を数えます。その全文を後半で紹介しています。
武蔵野市子どもの権利条例は、主に18歳未満の市民を対象とし、安心して生きる権利や自分らしく育つ権利、休息する権利などを保障するべき権利として掲げる。4月に施行するが、子どもの権利擁護の仕組みについては今後2年以内に定めるとしている。子どもの権利に関する条例は、都が「こども基本条例」を2021年4月に施行したほか、都内の区市でも制定の動きが広がりつつある。
市が有識者らによる検討委員会を立ち上げ、条例案作りを本格化させたのは21年度。併せて中学・高校生世代によるワークショップでも、子どもの権利条例をテーマに議論を始めた。
意見を尊重された経験、頭ごなしに否定された経験語り合う
議論の舞台となったのは「Teens(ティーンズ)ムサカツ」。市内在住、在学の希望者が地域活動に関心を深め、街づくりについて提言するために市が設けてきた場だ。実行委員会のメンバー(21年度15人、22年度34人)を中心に、日本が1994年に批准した国連の子どもの権利条約などを参考に「子どもの権利とは?」を考えるところから始めた。
過程では熱い議論が交わされた。市の検討委で「子どもの参加(意見を表す権利)」が重点項目にあがると、ムサカツのメンバー同士で自分の考えや思いを尊重された経験、頭ごなしに否定された経験などを語り合い、大人と子どもの関係性について考えた。
その後は市の検討委と意見交換をしたり、より多くの中高生が参加するワークショップを催したり。ムサカツをサポートする市子ども子育て支援課の福原綾乃さん(29)は「条例作りに生かすため、『自分たちが大切にしたいこと』は何だろうと、考えてもらった」と振り返る。
22年度の実行委が担ったのは、前文に入れる「子どもたちのことば」の文案作り。検討委が昨年5月に出した中間報告へのパブリックコメントで寄せられた、高校生世代までの自由意見881件も参考にした。「わたしたち子どもは」との主語で始まる文章で、昨年11月に示された条例素案に盛り込まれ、寄せられた意見を受けて微修正されたものがこの日、成立した。
実行委のメンバーで、都立武蔵野北高校2年の宮城結生(ゆい)さん(17)は「何年後かの社会を担うのは、子どもたち。その可能性を否定せず、伸ばしていけるまちであってほしい」と話す。その思いは、条例の前文に掲げた文章にある「わたしたち子どもは、未来の希望となる種」という表現に込められているという。
条例が成立したことで、「大人も子どもも、『子どもの権利とは』と考え、行動していくきっかけになってほしい」と願っている。(井上恵一朗)
■■武蔵野市子どもの権利条例…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル